認知症の予防は可能であると考えられています
500万人以上の人がかかっているとされる認知症ですが、その予防は一定程度可能であると考えられています。日常診療において、早期発見の上で、認知症を予防するための知識が必要とされています。認知症の予防において最も重要なのは運動です。運動によって認知症の予防や発症の遅延、進行の遅延といった可能性が高まります。また生活習慣病と認知症の相関も知られており、脳血管障害や動脈硬化の治療が認知症予防につながります。これらの総合的な診断・治療は地域のかかりつけ医にしかできないことです。
生活習慣病の治療が認知症の予防につながります
認知症のリスクを高める様々な要因が知られています。うつ病、生活習慣病などの病気や、難聴、視力低下、また社会的・経済的要因、遺伝的要因など様々な要因があります。この中で、高血圧、糖尿病、肥満などの
生活習慣病は大きなリスク要因であるとわかってきました。言い換えれば、生活習慣病の治療は認知症の予防に大きくつながります。できるだけ早期診断を行い、軽度認知障害の段階で生活習慣病の改善などの介入を行うという方向性がこれからの主流となっていきそうです。
認知症予防につながる生活習慣病は多くの人が関わるものばかりです
生活習慣病の代表的なものは高血圧・脂質異常症・糖尿病・肥満の4つです。このどれもが認知症と関連していると知られています。例えば
高血圧によってアルツハイマー病のリスクは3倍ほどになるとされており、また血管性認知症とも密接に関連しています。また
糖尿病によってアルツハイマー病のリスクは2倍ほどになるとされています。若い時からの糖尿病予防、特に運動療法が大切になります。
生活習慣病は動脈硬化病変を通じて認知症のリスクとなっています
上に挙げた高血圧や糖尿病は
動脈硬化を伴います。動脈硬化により脳梗塞(軽度のもの、もちろん重度の物は認知症より先に生命への影響がある)や白質病変につながり、認知症のリスクとなっています。同様に、脂質異常症・肥満症などの生活習慣病やストレス・喫煙などの生活習慣は動脈硬化につながり、やはり認知症のリスクとなります。これらを総合的に予防することで認知症のリスクは軽減されます。包括的な診断・治療が期待されています。
運動(特に有酸素運動)が認知症の予防に大きな効果があります
先に述べたように、認知症の予防において最も重要なのは運動とされています。まず、運動をすることによって生活習慣病の改善が期待できます。高血圧・糖尿病・肥満症などは運動によって改善でき、動脈硬化の予防、ひいては認知症の予防につながります。また運動不足自体が直接認知機能の低下につながると知られており、運動することで認知機能低下が予防できます。また、若い内から始めれば、運動は特別な医療、器具、訓練を必要としないのでコストもかからない最善の予防法といえます。
コミュニケーションや社会参加による予防も効果があります
毎日の会話も認知症予防につながります。毎日近所の人と交流して会話することは、感情を豊かにし、また実際に認知機能を使うことにもなり、認知症予防になります。高齢になると、難聴や視力低下によりどうしても外に出るのにも抵抗がありますが、家族の理解を得ながら積極的に外出することは重要です。また、老人クラブなどの社会参加や人的交流も大切です。高齢者が増える中、元気な間はできるだけ就労支援を行うなど、高齢者が人に認められ、尊重される社会の構築が求められています。