治療は抗てんかん薬による薬物治療が中心です
先述のとおり、8割ほどのてんかんは薬によってコントロールできます。これらの薬は抗てんかん薬と呼ばれており、作用機序によって大きく2つに分けられます。一方は、興奮系の働きを抑制するもので、具体的にはナトリウムイオンやカルシウムイオンに作用します。もう一方は、抑制系の働きを強化するもので、具体的にはGABA(γ-アミノ酪酸 )に作用します。これらと違った作用の抗てんかん薬も開発されています。
抗てんかん薬の選択は慎重に行われなければなりません
抗てんかん薬はハイリスク薬であり治療域と有毒域が近いので、患者さんの状態を見ながら慎重に選択する必要があります。てんかん発作の型、年齢、性別などに応じて薬を選択し、投与後も副作用が出ないようにモニタリングが必要となります。服薬した量が同じでも、脳に到達する量には個人差があるため、脳内の薬の濃度を測定する必要があります。しかし、脳内の薬の濃度は直接測定できないので、血液中の薬の濃度を元に脳内の濃度を推定します。
最初の抗てんかん薬が効かない場合2種類目を試します
他の薬同様、抗てんかん薬は様々な要因により合う合わないがあります。最初に飲んだ抗てんかん薬の効果が見られる場合は50-60%と言われています。最初の抗てんかん薬が効かない場合は2種類目を試します。10-20%のてんかん発作は2種類目以降の抗てんかん薬によって消失します。残りの2割ほどが抗てんかん薬が効きにくい難治性てんかんとなり、必要な場合は外科治療などが施されます。
長期間発作が出なければ医師の判断で服薬を終わらせられます
てんかんは発作が出る間はずっと薬を飲み続けなくてはならないため、患者にとって大変な負担になります。しかし、発作が消失している期間が何年にもわたり、医師が服薬を止めてもよいと判断した場合は、徐々に薬の量を減らしていきます。薬を減らしていく間に発作が起きず、完全に服薬を中止し、その後も発作の再発がなければ投薬治療は終了です。薬の中止後も発作が再発する場合があるので、半年から1年に1回程度、脳波検査や問診などを受ける必要があります。
てんかん焦点が判明している場合は外科治療が可能です
外科治療は、主としててんかん発作の原因となっている部位であるてんかん焦点を除去するというものになります。そのため、部分てんかんであり、てんかん焦点がはっきりしていて、かつその部分を切除しても障害が残らない場合のみ外科出術を行うことができます。難治性てんかんの中で、手術によって治療することができる場合のみ手術を行うという形になります。手術前には長時間記録ビデオ脳波モニター検査などを行い、入念に発作の状態を検査します。
患者さんや家族に対する精神面・社会面でのサポートが必要です
てんかんの患者さんは、それ以外にも身体や精神面での障害をあわせもつ場合があります。てんかんそのものが誤解されている場合もあり、どうしても社会的に不利が発生しがちです。正しく理解して受け入れてもらえるためにも、患者本人、そして家族に対する精神面、社会面の両面に対するサポートが必要になります。医師、心理療法士、理学療法士、ソーシャルワーカーなどが一体となって援助を行う体制の整備が急がれます。