脳は神経系の中心的存在です
人間は様々な感情を持ち、複雑な思考を行うことができますが、その神経の活動の中心を担っているのが
脳です。脳は、無数の神経細胞(ニューロン)からなる神経系の中心であり、情報伝達の最上位に位置しています。成人の脳の平均重量は、若干の男女差がありますが概ね1300g程度で、その80%程を大脳が占めています。大脳は知覚、分析、統合、記憶などの役割があり、人間が他の種とは異なるとされている非常に複雑な情報処理・思考能力を担っている場所となっています。
脳は頭蓋骨と髄膜・髄液で覆われて保護されています
脳は重要な組織であり、
頭蓋骨や髄膜・髄液によって何重にも覆われていて、損傷をできるだけ防げるような構造になっています。頭蓋骨の内側には、
硬膜・クモ膜という2種類の髄膜があります。その内側にはクモ膜下腔という髄液で満たされている空間があり、さらにその下に
軟膜という第3の髄膜があります。軟膜は脳の凹凸に添って接するように脳を包み込んでいます。特に硬膜は非常に分厚く強靭な構造で、脳を周りの組織から隔て外傷や感染から守っています。
脳は大きく4つに分けられます
脳は大まかに大脳、小脳、間脳、脳幹の4つの部位に区分できます。
大脳は運動・知覚・精神活動の中枢を担っています。
小脳は平衡機能など運動系の統合を行っています。
間脳は視床と視床下部からなりほぼ全ての感覚線維を中継しています。
脳幹は、中脳・橋・延髄からなり、脊髄につながる部分です。いずれの部分も非常に重要な役割を有していて、全体がバランスをとり協調しながら様々な機能を担っています。特に大脳皮質には多種多様な機能が分布しており、これを
大脳皮質の機能局在と呼びます。
脳は物を認識するという過程において様々な処理を行っています
脳の情報処理過程は非常に複雑です。例えばリンゴを見た場合、人間はそれをリンゴであると簡単に認識できますが、そこに至るまで脳内では様々な処理が行われています。まずリンゴを見た視覚情報が視神経から脳に伝達されます。次に、この視覚情報を形・色・動きをはじめ、様々な側面に分解した上でもう一度組み立て直してから過去の記憶と照らし合わせて認識しています。さらに実際のリンゴは3次元ですが、網膜は2次元であり、そして人間の認識は3次元です。つまり、3次元→2次元→3次元という情報処理も同時に行われています。
様々な機能がある脳に障害が表れると大きな影響が出ます
脳は様々な情報を処理し、また体全体を制御しています。感覚、情動、欲求、記憶、学習、運動と様々な働きをしているがゆえに、脳に障害が表れた場合は非常に大きな影響が出ます。神経心理学だけでなく、精神心理学、認知心理学、発達心理学とあらゆる心理学の分野は脳やその機能と何らかの関連を持っています。特に
神経心理学は、脳の損傷が、人間の行動および精神へどのような影響を及ぼすのかが1つの大きなテーマであり、脳と密接に関連している心理学の分野です。
脳の機能は画像診断と問診・心理検査を組み合わせて評価されます
CT・MRI・MRAといった様々な画像診断技術の発達により、脳内で何が起きているかを可視化できるようになってきました。一方で、脳内の物理的症状だけでなく、実際に患者さんの情報処理や行動・運動のどの部分に障害が表れているかを判断するには、画像診断だけでは十分でなく、
問診や
心理検査によって診断が行われます。例えば、慶應版ウィスコンシンカード分類検査(KWCST)は前頭葉機能障害の診断に幅広く用いられています。画像診断と問診・心理検査をうまく組み合わせれば、より正確な診断が行えます。