抗うつ薬はうつ病から回復するために必要な治療法です
病院でうつ病と診断されると、多くの場合
抗うつ薬が処方されます。海外では非常に日常的なことですが、日本では精神的な症状に対して薬を服用することに抵抗を感じる患者さんがいらっしゃいます。うつ病の項で述べましたが、「うつ病になること」や「薬を服用すること」は自分の弱さを認めることになると誤解されている方もいらっしゃいます。抗うつ薬は、風邪薬と同様、研究に基づいて適切に処方されているものです。医師の方は患者さんに丁寧に説明し、患者さんはそのことを理解して服用する必要があります。
抗うつ薬は脳内の神経伝達物質に働きかける薬です
うつ病(気分障害)の患者さんは脳内の神経伝達物質の分泌量が正常の方とは異なっています。簡単に言えば、脳内環境のバランスが崩れている状態と言えます。抗うつ薬は実体のない「こころ」そのものに働きかける薬ではなく、脳内環境・神経伝達物質に働きかける薬です。多くの薬はセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質に働きかけます。現在では、様々な抗うつ薬が開発されています。
抗うつ薬には様々な種類があります
どの神経伝達物質にどのように働きかけるか(作用機序)によって、抗うつ薬には様々な種類があります。大きく分けると、開発年代が古い順に、
○三環系抗うつ薬
○四環系抗うつ薬
○SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬
○SNRI:セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
○NaSSA:ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬
があります。一般的には、新しい薬ほど特定の神経伝達物質により選択的に作用するので、治療効果が高く、副作用は少なくなります。薬には相性もありますので、医師と患者が相談しながら適切な薬を選択することが必要です。
抗うつ薬は効果が現れるまでには一定期間飲み続ける必要があります
抗うつ薬は脳内環境を整える薬ですので、他の病気に対する薬と同様に効果が現れるまでには一定の時聞が必要になります。個人差はありますが、大体、
1~2週間ぐらいはかかります。この間に効果が出ないからといって服用を止めてしまっては意味がありません。また効果があって抑うつ症状が消えたからといって、服用を止めてしまうと再び脳内環境が以前の状態に戻ってしまいます。これを防ぐために2ヵ月ぐらいを目安として服用を続ける必要があります。
抗うつ薬にも副作用があります
他の薬同様、抗うつ薬にも
副作用があります。
○口の渇き
○便秘・排尿障害
○眠気・睡眠障害
○頭痛・胃痛
などです。抗うつ薬の服用開始初期は人に対して攻撃的になったり、不安・焦燥が見られる場合があります。これらは20代~30代の方に多いと考えられています。副作用があることを理解し、医師と患者が相談しながら適切な薬を選択することが必要です。
抗うつ薬とともに他の薬が処方されることがあります
基本的に1種類の抗うつ薬で治療することになっていますが、抗うつ薬以外の薬と合わせて処方されることもあります。抗不安薬や睡眠薬は、うつ病に伴う症状を和らげる薬で、よく合わせて処方されます。また、なかなか治療効果が得られない場合、気分安定薬や抗精神病薬などを併用した強化療法が行われることがあります。いずれの場合も、それぞれの薬には別の役割があり、その役割を患者さん自身がよく理解して納得して服用することが何よりも大切です。