記憶は大きく3つに分類されます
記憶とはものごとを忘れずに覚えていることですが、その記憶時間によって記憶は大きく感覚記憶、短期記憶、長期記憶の3つに分類されます。
感覚記憶は感覚器官において1秒ほど映像や音などを保持する記憶です。
短期記憶はより長く、数十秒間覚えていられる記憶です。短期記憶の容量は7±2(5~9)とされており、一度に8個以上のことを記憶するのは困難とされています。
長期記憶はさらに長く、何十年も記憶することができます。また大容量の情報を記憶できます。
短期記憶は保持時間を延ばしたり長期記憶に転送したりできます
短期記憶の保持時間は数十秒であり、情報は時間の経過とともに忘れられます。しかし、記憶するべき項目を何度も唱えることにより、忘却を防いだり、長期記憶に転送したりすることができます。何度も唱えることを心理学では
リハーサルと呼び、短期記憶を保持するリハーサルを
維持リハーサル、長期記憶に転送するリハーサルを
精緻化リハーサルと呼びます。電話番号をつぶやいているとより長い時間覚えていられるし、紙に何度も書いたりすれば完全に記憶できますが、何もしないとすぐに忘れてしまうといったイメージです。
長期記憶には様々な種類の記憶が含まれます
長期記憶は言葉で表せるかどうかで、
陳述記憶と
非陳述記憶の2つに大きく分けられます。陳述記憶は
意味記憶と
エピソード記憶に分けられ、前者は言葉の意味の記憶であり、後者は個人的に体験したことや出来事の記憶です。非陳述記憶の代表的なものは
手続き記憶であり、意識しなくてもできる体で覚えるタイプの記憶です。例えば、自転車の乗り方や泳ぎ方が挙げられます。他にプライミング記憶や古典的条件付け、非連合学習などが含まれます。
記憶は海馬で作られ、大脳皮質に貯蔵されます
記憶において
海馬という脳の部位が非常に重要な役割を果たしています。海馬は大脳辺縁系の一部分であり、大まかに言うと記憶を分類して必要なものと不必要なものに分ける役割があります。海馬で作られた短期記憶のうち、必要と判断された物が大脳皮質に貯蔵され長期記憶となります。海馬自身が記憶しているわけではありませんが、記憶の過程においてその働きは重要であり、海馬が働かなくなると新しいことが覚えられなくなってしまいます。
記憶の過程には記銘、保持、想起、忘却があります
記憶の過程は、まず覚えることから始まります。情報を憶えることを
記銘と呼びます。また、人間の記憶に取りこめる形式に情報を変換するので
符号化とも呼ばれます。次の情報を保存しておく過程は
保持、または
貯蔵と呼ばれています。次の情報を思い出す過程を
想起と呼びます。想起の仕方には再生、再認、再構成などいくつかの形式があります。そして最後に
忘却の過程があります。一般的には記銘を記憶と呼びますが、心理学で言う記憶とはこれら4つの過程を合わせたものです。
記憶の忘却は非常に重要な働きです
人間の記憶容量には限界があります。記憶が決して忘れられないものなら、いつか人間は新しいことを記憶できなくなってしまします。しかし、現実には記憶を忘却し、半永久的に新しい記憶を手に入れることができます。そのメカニズムには諸説あり、時間の経過とともに記憶が失われていく減衰説や、他の記憶の影響によって失われる干渉説などが考えられています。また記憶が失われるのではなく、記憶にアクセスできなくなるだけという検索失敗説も想定されています。