気分障害は躁うつ病の新しい呼び方です
気分障害はDSM-Ⅲで始めて用いられた新しい用語で、それまでは躁うつ病と呼ばれていました。長時間にわたって悲しみで過度に気持ちがふさぎこむうつ状態と、喜びで過度に気持ちが高揚する躁状態の両方または一方が周期的に表れます。
病的なまでの過度な感情の起伏が感情障害です
気分障害は
感情障害とも呼ばれます。悲しみや喜び・高揚は日常生活で普通に経験する感情であり、それ自体はごく自然な反応です。しかし、悲しみや喜び・高揚が過度に強く、かつ長引き過ぎてる場合は、身体機能を損ない、社会生活や仕事の上でも大きな支障をもたらす恐れがあるため、気分障害と診断されます。
気分障害はうつ状態と躁状態からなります
気分障害には単極性のものと双極性のものがあります。
単極性障害はうつ状態と躁状態のみがそれぞれ表れるもので、主として抑うつを示します。うつ状態を伴わない単極性の躁病は非常にまれです。
双極性障害は、うつ状態と躁状態が交互に現れます。
かなり多くの人にうつ症状が見られます
経済格差の大きい米国では、人口の約17%にあたる人が、医学的な治療が必要なほど重度のうつ病を経験します。そのうち3分の1が慢性うつ病で、その他は正常な気分の状態の間にうつ状態がみられる反復性うつ病です。日本では、以前は人口の0.5%前後の疾病率といわれていましたが、現在では、軽症例も含めれば
10%近くが何らかのうつ症状を有していると考えられます。
年齢・性別・経済力などによって発症率が異なります
気分障害は、性別に関しては女性の方が男性よりも多いと言われています。不思議なことに、生活水準に関しては困窮している家庭よりも中流以上の家庭に多くみられます。また、20~30歳代と50~60歳代に発症のピークがあり、後者を特に
初老期うつ病と呼びます。
気分障害の要因は多岐にわたります
気分障害のはっきりした原因は不明ですが、要因はたくさんあります。遺伝による場合、薬の副作用として発症する場合、つらい出来事によって発症する場合など、さまざまな要因が考えられます。うつ病は性格的な弱さを反映するものではなく、人格障害や小児期のトラウマ体験、親の育て方の問題によるものでもありません。特に大きなストレスがなくても発症したりすることがあります。
神経伝達物質と気分障害には関連があります
気分障害が起こる原因の1つに、
神経伝達物質であるセロトニンとノルアドレナリンの増減があります。これらの神経伝達物質の増加が躁状態を、減少がうつ状態を引き起こすと考えられています。抗うつ薬は、このセロトニンとノルアドレナリンの量を増やし、脳の活動を活発にして症状を良くしようとするものです。
躁状態とうつ状態は紙の裏表のようなものです
喜ばしいはずのことでうつ状態が出現したり、悲しむべきはずのことで躁状態が出現することがあります。躁状態とうつ状態はどちらも感情の起伏が過度に大きくなった状態であり、表裏一体のものです。ただし、躁病とうつ病とで治療法、特に処方される薬については異なるので注意が必要です。