仮面うつ病は他の症状によってうつ病本来の症状がわかりにくくなっている状態です
仮面うつ病は1950年代と古くから提唱されている概念です。うつ病の主症状である憂鬱感、やる気や集中力の低下よりも、うつ病以外の病気でもよく見られる腹痛や頭痛などの身体症状が目立っている状態です。うつ病であるにもかかわらず、うつ病以外の病気に診断されがちなため、治療がなかなか進まず慢性化してしまう危険性があります。また「異常なし」「気のせい」とされてしまう場合もあります。
仮面うつ病はうつ病の一種で治療法もほぼ同じです
仮面うつ病はあくまでも身体症状が目立っているといううつ病の一状態であり、病気としてはうつ病の1つのタイプにすぎません。うつ病の主症状が目立っていないということからも、仮面うつ病はうつ病の中でも軽症例の場合が多いです。仮面うつ病の場合もうつ病と同様の抗うつ剤がよく効くことが報告されています。休息・薬物療法・精神療法の3つを組み合わせていくことで仮面うつ病は改善されます。
うつ病のタイプとしては内因性うつ病にあたる場合がほとんどです
仮面うつ病はストレス・環境などの外的要因ではなく、内的要因、特に性格的背景に原因がある場合が多く見られます。患者さんにはうつ病の項で紹介したようなメランコリー親和型の方が多いです。秩序や規則を重視する人、完璧主義な人、責任感が強い人、このような自分に厳しい性格傾向を持つ方は仮面うつ病になりやすいです。自分に厳しい分、精神的な弱さを人に見せるのを嫌がる方が多いので、その分行き場を失ったストレスが身体症状として現れる傾向が強くなります。
仮面うつ病を患者さんが受け入れることが一番重要です
治療にあたっては自分がうつ病だということを受け入れてもらうことが重要です。しかし、仮面うつ病の場合は身体症状が主なので、なかなか受け入れられない方もいらっしゃいます。また、患者さんが「うつ病にかかるということは自分が精神的に弱い」と思って、心理的抵抗が生じてしまう場合があります。うつ病という病気の本質を理解してもらい、心理的治療の必要性をしっかりと伝えることが大切です。
仮面うつ病についての正しい知識を持つことが求められています
仮面うつ病が知られるようになるにつれて、症状があるのに原因がわからない病気を仮面うつ病と診断してしまう事例が見られるようになりました。本当はうつ病でないのに、抗うつ剤を投与されてしまった場合、薬の副作用により身体症状が悪化することもあります。診断には、一度の簡単な問診だけでなく、DSMやICDといった診断基準に合致するかどうか、うつ病を調べる尺度(質問紙)など
多面的な判断が必要になります。