薬物依存症は中毒性の精神障害を引き起こします
薬物依存症はニュースなどでもたびたび取り上げられている病気であり、身体にも重篤な影響を与えますし、重大な事件につながる恐れのある病気です。薬物依存症は
精神疾患に分類されており、深く心理的要素が関連していることが知られています。特に中毒性の精神障害と密接に関連しており、身体だけでなく心理的要素も含めた総合的な支援と治療、そして適切な指導が必要になってきます。
薬物依存症では精神的依存と身体的依存の両方が起きます
薬物依存症が恐ろしいのは、精神と身体両面での依存が生じるからです。
精神的依存は、薬物を繰り返し摂取したいという欲求と衝動が生じるようになる状態です。依存性のある薬物には、快感を生じさせるもの、陶酔感や多幸感をもたらすもの、不安や苦痛を軽減するものなどがあります。一方、
身体的な依存は、薬物を中断することにより、
離脱症状(一般的には禁断症状)が起きる状態です。いずれの依存も、薬物がない状態に絶えられなくなり、強迫的に薬物を求めることになります。
薬物を繰り返し摂取すると耐性が生じます
薬物を繰り返し摂取すると、徐々に薬物の効果が減ってきて、薬物量を増やさなければ満足できなくなります。アルコールも広義には薬物の一種ですが、アルコールも徐々に「慣れる」ことがあり、酔いにくくなってきます。この状態が
耐性が生じた状態であり、特にモルヒネなど身体依存性の薬物に耐性が生じやすいです。また、ある薬物に耐性が生じた際に、別の薬物にも耐性がみられることがあり、
交叉耐性と呼ばれています。例えば、バルビツール系の薬物とアルコールの間に交叉耐性がみられます。
同じ薬物を繰り返し摂取して中毒症状がみられる状態を嗜癖と呼びます
薬物依存症で最も恐ろしいのは中毒症状が出てくることです。同じ薬物を繰り返し摂取して中毒症状がみられる状態を、医学的には中毒と呼ばず
嗜癖と呼んでいます。嗜癖が形成されると、どんな手段を使ってもその薬物を手に入れようとするため、周囲の人間や社会に悪影響を及ぼす危険性が高まります。殺人事件につながるリスクもある精神疾患の1つであり、嗜癖状態から抜け出すまで治療・指導を行うことが非常に重要です。
薬物が習慣となっていて本人以外に影響を及ぼしていなくても注意が必要です
薬物を反復して摂取しているが、薬物への欲求が衝動的なまでではなく、周囲に影響を及ぼさない場合を
習慣と呼びます。この場合は摂取量の増加もほとんどなく、身体的依存がなく離脱症状がみられません。したがって、一見安定した状態であり、うまく薬物を使いこなしているように見えるかもしれません。しかし何らかの物理的・心理的変化が起き、一度微妙なバランスが崩れれば、たちまち中毒症状がみられる嗜癖状態になりうる状態であり、十分な注意が必要です。
薬物依存症には必ず専門的な治療が必要です
薬物依存症には精神的な要因が大きく関連しており、本人だけで回復できる病気ではありません。必ず薬物治療専門科や精神科などを受診して、専門家の指導の下で治療を行うことが必要です。まず、薬物依存状態から一度完全に離脱することが必要です。この時はせん妄や痙攣などの離脱症状が起きる可能性があり、入院が必要な場合もあります。各薬物ごとに、適切な離脱方法が研究されており、好ましい方法を医師が判断します。離脱後は、心理療法などを行い、患者の環境や性格にまで気を配る必要があります。