神経症は古くから使われている精神医学用語です
神経症は、心理的原因(心因)≒ストレスによって起こる心身機能の障害で、不安などの不適応行動を特徴とする病気です。かつて精神障害は、神経症と精神病に大きく分類されていましたが、より正確な診断を行うために「神経症」という言葉はDSMなどから削除され、気分変調性障害、パニック障害、全般性不安障害などに細分化されて記述されています。神経症という言葉自体はなくなりましたが、神経症の患者さんがいなくなったわけではなく、現代社会においても重要な概念です。
神経症とストレスには密接な関係があります
神経症は
ストレスが原因である心の病気の代表的なものです。不安や不満を抱えやすく、それをうまく処理することができない性格の方は神経症になりやすいです。具体的には、自分を必要以上によく見せようとする人や過度に几帳面な人が神経症になりやすいです。こういった個人的な素因に、引き金となる心理体験が加わることで神経症を発することが多いです。ストレスに強い人であっても、大きなストレスを受けると神経症になります。
神経症の分類1:不安神経症
特に対象のない漠然とした不安を感じるのが
不安神経症で、動悸、頻脈、呼吸困難などの自律神経失調症状を伴うことが多いです。現在では、突然、激しい不安に襲われ、パニック発作を引き起こすパニック障害と、さまざまなことが心配になって落ち着かなくなる全般性不安障害として診断されています。不安神経症は未分化な不安と考えることができます。この漠然とした不安が、具体的な不安に変われば他の神経症と考えられます。
神経症の分類2:ヒステリー
大きなストレスにより、通常では考えられない不思議な症状が起きる時があります。辛い出来事の記憶が失われたり、物理的問題がないにも関わらず、身体の一部が動かなくなったり、知覚障害が起きたりします。これらは
ヒステリー性神経症として分類されてきましたが、現在では解離性障害と呼ばれています。患者は症状について全く不安に思っていないことから、これらの症状を作り上げることで、無意識的に内的な葛藤を解消しようとしているのだと考えられています。
神経症の分類3:強迫神経症
自分の意志に反して強く意識上に出現する
強迫観念があり、それに伴って
強迫行為を繰り返す神経症です。例えば、自分の手が汚れているという強迫観念があり、繰り返し手を洗ったり、外出の際に、鍵をかけたか、ガス栓を閉めたか気になり、何度も後戻りしては確かめるといった例が挙げられます。こう考えるのは馬鹿馬鹿しいと思っていても、患者はそれを止めることができません。強迫神経症は、現在では強迫性障害と呼ばれています。
神経症の分類4:恐怖神経症
特定の物や状況に対して異常に強い恐怖感を示す神経症です。例えば、自分以外のものに対して恐怖を示す、広場恐怖、閉所恐怖、高所恐怖、自分自身に関して恐怖を示す、対人恐怖、視線恐怖、醜形恐怖などが含まれます。内心ではそれほど恐れるような存在ではないことがわかっていても、実際にはひどい恐怖を感じてしまいます。現在では、不安障害という言葉で理解されています。
神経症の分類5:抑うつ神経症
不安や恐怖などの一般的な神経質症状とともに、軽度のうつ状態が続く神経症です。妄想を持つような重症状態にはならず、慢性的な軽うつ状態が2年以上続くような場合は
抑うつ神経症と呼び、うつ病とは区別して考えられています。抗うつ薬も治療に使われますが、うつ病ほどの効果は見られないようで、長期的なカウンセリングや精神療法が必要なケースが多いです。現在では気分変調症と呼ばれています。
神経症の分類6:心気神経症
自分の健康状態について過度に関心を持ち、些細なことで苦悩する神経症です。重病にかかっているという恐怖を感じたり、本当に自分は病気だと思いこんだりします。もちろん身体検査で異常が見つからない場合を指します。身体機能の不調を訴えることで、周囲の人に関心を持ち、受け入れてもらおうという依存欲求が根底にあると考えられています。現在では、身体表現性障害の1つである
心気症として理解されています。
詳しく分類せず神経症として大きく理解することも重要です
神経症は上に挙げた様々な病気を内包する大きな概念です。患者さんが上に挙げたどれに当てはまるのか詳しく分類することも大切ですが、何種類の神経症が併発する場合もあります。神経症として大きく理解し、その上で個々の患者さんにあった治療法を捜していくことも重要と考えられます。弊社が出版しています
CMI健康調査表は、神経症のスクリーニング検査として精度が高いものとなっています。ぜひご活用ください。