光を受容するのは桿体細胞と錐体細胞です
明るさや色を感じる視覚において、まず最初に働いているのが光受容器である
視細胞です。視細胞は網膜にあり、
桿体細胞と
錐体細胞の2種類があります。錐体細胞は外界側がその名の通り尖っています。錐体細胞には特定の波長の光に反応するものがあり、色彩を区別できます。桿体細胞は外界側が尖っていなくて、棒状です。感度が高いため、暗い場所でも光を感知することができます。逆に、錐体細胞は暗い場所では機能が落ち、桿体細胞は色覚を感知する機能がほとんどありません。
視細胞の中心はロドプシンに含まれるオプシンというタンパク質です
細胞の中で光に対して鋭敏に反応しているのはタンパク質です。錐体細胞には
ロドプシンという色素があり、この色素には
オプシンと呼ばれるタンパク質が含まれています。オプシンの種類によって、最も反応する光の波長が異なり、赤錐体、緑錐体、青錐体の3種類が人間の網膜に存在します。桿体細胞にもオプシンが含まれますが、このオプシンは緑青色の光を最も吸収するため、感知できる光は赤紫色です。このため、桿体細胞しか働けない暗い場所では、ほぼモノクロにしか見えません。
視覚情報は網膜を通じて視神経へと伝達されます
網膜には視細胞、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、神経節細胞の5種類の神経細胞があります。視細胞、双極細胞、神経節細胞は縦に、水平細胞、アマクリン細胞は横につながり合い、ネットワークを形成して明るさの比較や色覚を決定します。中間ニューロン(双極細胞やアマクリン細胞)を経由して、最終的には神経節細胞へと情報が伝達されます。神経節細胞は脳まで届く長い軸索を持っており、視覚情報を脳の中枢へ伝達します。
(網膜の層状構造:wikipedia パブリックドメイン)
視野の左側は右半球、右側は左半球で処理されています
神経節細胞から伸びる軸索の束が視神経ですが、このうちの一部は脳の右半球へ、残りは左半球へとつながっています。しかし、右眼の視神経が右半球へ、左眼の視神経が左半球へと単純につながっているわけではありません。視野の左側は右半球、右側は左半球で処理されるように視神経はつながっています。したがって、それぞれの眼の視神経は半分が右半球、もう半分が左半球につながるようになっています。
視神経は交差しています
視野の左側は右半球、右側は左半球で処理されます。このため、右目の右視野の視神経は、眼のある側と反対の左半球につながっています。同様に、左眼の左視野の視神経は、反対の右半球につながっています。したがって、この2つの視神経は交差して反対側の半球につながっていることになります。これを
視交差といいます。視交差は、2つの眼が見ているものを必ず同じ側の半球で処理して、奥行きや立体感を感じ取るための重要なしくみです。
(視神経と視交差:wikipedia パブリックドメイン)
視神経を経た情報は最終的に大脳皮質視覚野へと送られます
神経節細胞からの信号は、視交差を経て外側膝状体と送られます。
外側膝状体は視床領域の一部であり、信号をより精緻なものにした上で、
大脳皮質視覚野へと送ります。信号はまず一次視覚野(V1)で処理されたあと、高次視覚野(V2,V3,V4)などの部位で処理されます。一次視覚野(V1)についてはよく研究が行われていますが、それより先の視覚処理については現在も研究が進められています。視覚1つを取っても、様々な部位が関連して精巧な処理を行っていることがわかります。
(大脳視覚野:wikipedia パブリックドメイン)