感覚を測定する方法として精神物理学的測定法が提唱されました
物理的世界と心理的世界を結びつけて考えようとするのが
精神物理学の分野です。例えば視覚刺激にはワット、聴覚刺激にはデシベルというように、物理的な刺激には単位があります。これと同様に単位系のある物理量で感覚の量を表現するという考え方が生まれ、
精神物理学的測定法が提唱されました。グスタフ・フェヒナーが創始者であるこの分野は、心理学(実験心理学)の成立に大きな影響を与えました。
刺激には知覚するために必要な刺激閾があります
例えば音の場合、音を徐々に大きくしてゆくと聞こえるようになります。個人によって差はありますが、ある音量までは全く聞こえず、それより大きいと聞こえるようになります。このように知覚するために必要な最小の刺激強度が存在し、それを
刺激閾と呼びます。実際は、閾値は明確に1つの値ではなく、2回に1回は知覚できるとか4回に3回は知覚できるというように、知覚できる確率が関連してきます。聴覚以外にも様々な感覚に対して刺激閾を考えることができます。
2つの刺激が等しいと感じられるときその2つを等価とします
例えば音の場合、1000Hzの音を基準として、500Hzの音で同じ大きさに聞こえる音を探します。この2つの音は周波数は違いますが大きさが同じに聞こえるので、音の大きさにおいて
等価であるということができます。周波数ごとに1000Hzの音と等しい大きさと感じられる音圧レベルを調べたものが等ラウドネス曲線です。等しいというのは主観的な感覚であり、最初に設定した標準刺激に対してそれと等価と思われる刺激を
主観的等価値(point of subjective equality:PSE)と呼びます。
(等ラウドネス曲線:wikipedia パブリックドメイン)
2つの刺激を区別できる最小の刺激変化量を弁別閾と呼びます
ある刺激(I)が標準刺激として提示され、次にそれより大きいあるいは小さい刺激(I±ΔI)が提示されたとします。このとき2つの刺激が異なるとわかる最小の刺激変化量(ΔI)を
弁別閾と呼びます。音で言えば、1000Hzと1001Hzの音を聞き分けられる人はほぼいませんが、1000Hzと500Hzの音なら違う音だと簡単にわかります。弁別閾を標準刺激の強度で割った値はほぼ一定であり、これをウェーバーの法則と呼びます。すなわち ΔI/I=(一定) と表せます。例えば100の刺激が110になったときはじめてその差に気づくならば、200の刺激が210に増加しても気づかず、220になったとき気づきます。
刺激の強さが一定でも、感覚は刺激の提示時間とともに変化します
同じ刺激を受けていても、それに対して人は徐々に慣れます。これを
順応と呼び、どの感覚においても見られる現象です。例えばお風呂にはいる時、最初は熱いと感じても入っているうちに丁度良いと感じるようになります。不快な臭いも徐々に慣れて感じなくなります。明るい場所から急に暗い場所に行くと始めは何も見えませんが、時間が経つと見えるようになります。同じことが味覚や聴覚、他の感覚でも起きます。