
認知症は脳機能が低下し記憶や思考に影響がみられる病気です
人間の脳は、膨大な数の神経細胞(ニューロン)がうまく連携を取り合い、精密な身体の運動から複雑な思考まで、様々な働きを可能にしています。様々な理由によりこの機能の一部が正常に働かなくなり、記憶や思考に影響が表れることがあります。人間の認知機能、すなわち物事を知覚し、認識し、理解・解釈し、記憶する機能に影響が現れた状態を
認知症と呼びます。
認知症は非常に身近な病気です
医療の進歩により寿命が延び、長寿国となった日本にとって、認知症は非常に身近な病気と言えます。現在、全国の認知症高齢者数は
500万人を越えると言われていますし、認知症予備軍とも言える軽度認知障害(MCI)の高齢者も同程度の人数がいると考えられています。日本では少子高齢化が顕著であり、こういった認知症の患者さんに対する介護などの対策はこれから直面しなければならない大きな課題となっています。
通常の老化による物忘れと認知症は異なるものです
高齢になるにつれ、記憶力が落ちたり、人の名前が思い出せなくなったりします。これは脳の老化による正常なものであり、認知症とは全く異なるものです。認知症の場合は、病気など(アルツハイマー病が代表的)によって脳の神経細胞が破壊されることによって物忘れなどの症状が起きています。症状が徐々に進行することによって、社会生活や日常生活に大きな支障が出てくるようになる点が、通常の老化による物忘れと全く異なります。
認知症の場合は判断力が低下します
通常の老化と認知症のさらに異なる点は、認知症の場合は判断力が低下してしまうことです。最近認知症の方による自動車事故が相次いでいますが、咄嗟の判断が要求される自動車運転は判断力が低下している認知症の方には難しくなります。現在は免許更新の際に、75歳以上のドライバーについては認知機能の検査が行われるようになっています。それ以外にも判断力の低下により、様々な支障が生じてきます。
物忘れをしている自覚がないのも認知症の特徴です
通常の老化による物忘れの場合、「最近物忘れがひどくなった」と思うことができます。しかし、認知症の方は物忘れをしているということを認識することもできなくなってしまいます。判断力の低下から、様々なおかしい行動をしていても、それがおかしいと認識することができません。症状が出て、家族に説得されて渋々病院につれてこられた患者さんが、認知症である確率は高いと言えます。
認知症には進行速度を遅くしたり症状を軽減させて対応します
先述の通り、認知症は脳の神経細胞が破壊されることによって起きています。そのため、一部の稀なケースを除き、認知症を完全に直す方法は存在しません。薬物療法とリハビリテーションによる治療とケアを行うことで進行の速度を遅くしたり、症状を軽減させて対応します。認知症の症状が少しでもおさまれば、本人と介護している方両方の負担が軽くなります。
少しでも症状が軽い内に対処することが大切です。