急性アルコール中毒には精神障害が伴う場合があります
急性アルコール中毒は、一気にアルコールを摂取したことによって生じる中毒症状です。血中アルコール濃度が急上昇し、アルデヒド分解酵素の機能が追いつかなくなって生じます。アルコールには脳を麻痺させる性質があり、生命維持に関わる脳の中枢部分の麻痺により、呼吸機能や心拍機能が停止して死に至る恐れがあります。一方で、脳への影響から
精神障害が生じる場合もあります。
通常の場合、症状は血中アルコール濃度に比例します
酔っぱらうことを医学用語では
酩酊と呼びます。身体的・精神的症状は通常の場合、アルコール濃度に比例します。このような通常の酩酊を
普通酩酊と呼び、程度によって爽快期・ほろ酔い期・酩酊初期・酩酊期・泥酔期・昏睡期の6段階に分類されます。酩酊期には小脳への影響から千鳥足になり、泥酔期には海馬の麻痺により記憶に影響が出ます。昏睡期には麻痺が延髄も含め脳全体に広がります。
複雑酩酊では人格が一変したように見える状態になります
異常酩酊の1つである
複雑酩酊である場合、飲酒によって刺激性が高まり、かなり長い時間興奮がみられます。一般的には「酒癖がわるい」、「酒乱である」という状態であり、平常状態から人格は一変したように見えます。平常時では抑制されている衝動性や未熟性がアルコールによって解放された状態と言えます。重大な情動犯罪や自殺につながることがあるので注意が必要です。
病的酩酊は複雑酩酊にさらに意識障害が付け加わった状態です
もう1つの異常酩酊である
病的酩酊では、さらに朦朧(もうろう)状態や譫妄(せんもう)状態が出現し、行動に変化が見られます。幻覚が生じたり見当識が失われ、周囲の状況の認知がほとんど不可能な状態です。異常酩酊には遺伝的な要因、アルコール依存症、脳器質性障害などが関連していると考えられています。異常酩酊は繰り返して起きることが多く、断酒が必要になります。
急性アルコール中毒はとにかく予防が大切です
急性アルコール中毒は、お酒さえ飲まなければ必ず防ぐことができる疾患です。また、自分のアルコールに対する耐性を把握する、飲み始めはゆっくり飲む、空腹時に大量に飲まない、一気飲みはしないなどを注意すれば予防できます。万一、急性アルコール中毒になった場合は、周囲の応急処置、すばやい通報と病院への搬送が必要です。病院に行ってもエタノールの急性中毒に解毒薬はなく、対症療法が行われるだけです。