細胞の外側と内側には電位差があります
細胞は細胞膜によって外側と内側に分けられています。細胞の外側と内側に存在するイオン分布には差があるので、全ての細胞において膜内外には電位差があります。この電位差を
膜電位といいます。神経細胞の情報伝達だけでなく、ゾウリムシの繊毛の動きや、オジギソウの葉っぱが触れることによって動くことも、膜電位の変化によってコントロールされています。
細胞内外の電位差は様々な種類の膜タンパクによって生じています
細胞膜は脂質二重層という構造になっていて、イオンを透過することはありません。しかし、細胞膜には様々な種類の膜タンパクが埋め込まれていて、この部分はイオンを細胞膜を越えて行き来させることができます。
イオンポンプはATPなどのエネルギーを利用して、特定のイオンのみを能動輸送します。
イオンチャネルはエネルギーを用いないただの通り道で、特定のイオンのみを受動輸送します。
神経細胞ではNa+-K+ポンプとK+漏洩チャネルにより静止膜電位が生じます
神経細胞の細胞膜には
Na+-K+ポンプというイオンポンプが存在します。このイオンポンプはK+の細胞内への能動輸送とNa+の細胞外への能動輸送を行っています。3つのNa+を細胞外に排出すると同時に二つのK+を細胞内に取り込むので、細胞外よりも細胞内が電位が低くなります。また、K+はK+漏洩チャネルというイオンチャネルによって細胞外に出て行こうとします。K+が出ていこうとする力とK+を内部に引き留める力が釣り合う力により、-70mVという静止膜電位が維持されます。
(Na+-K+ポンプ:wikipedia パブリックドメイン)
神経細胞では活動電位という形でシグナルが伝達されます
活動電位とは、何らかの刺激によって細胞膜に生じる一過性の電位変化のことです。刺激がない場合、細胞では上で述べたように-70mVという静止膜電位が維持されていますが、これが急激に変化します。ミリ秒(ms,1000分の1秒)という短いタイムスケールの間に、膜電位は一気に-70mVから50mVまで上昇します。その後、同じぐらいすばやく50mVから元の70mVにまで低下します。神経細胞ではこの電位変化という形でシグナルが伝達されます。
活動電位は電位依存性Na+チャネルが開くことによって生じます
神経細胞が信号を受け取ると、膜電位がわずかに+の方向に動きます。この変化により、
電位依存性Na+チャネルが開き、Na+が濃度差によって細胞内に流入します。これにより膜電位はさらに+の方向に動き、一気に膜電位が逆転します。これを
脱分極と呼びます。神経細胞では、樹状突起で受け取った刺激が細胞体を経由して軸索上へと、次々と一方向に伝達される形で活動電位の伝導が起きます。
活動電位は局所的な脱分極が閾値を越えたときのみ引き起こされます
刺激を受けても活動電位が起きない場合もあります。最初に受け取った刺激が「
閾値」(約-55mV)を越えない場合は、活動電位は生じません。閾値を越えれば、一気に脱分極が起き活動電位の伝導が起きます。閾値に達するか達しないかで、個々の神経細胞の反応は最大値(50mV)か、全く反応がない(-70mVのまま)かの2つに分かれます。このことを
全か無かの法則と呼びます。
一気に上昇した活動電位は再び元の静止膜電位に戻ります
膜電位が上昇すると、今度は電位依存性Na+チャネルが不活性化されチャネルが閉じます。また、電位依存性K+チャネルが開き、膜外へK+が流出します。この2つの機構により、膜電位は再び元の静止膜電位に戻ります。このあと、
不応期と呼ばれる刺激に反応しない期間があります。これがなければ、活動電位が一方向に伝わりません。不応期によって活動電位の逆流が防がれているのです。