人間は多くのものを学習によって身につけます
一般的に用いる学習とは違い、
心理学における学習とは大変広い概念です。勉強とも呼ばれる学習だけでなく、芸術的なスキル、運動能力、料理や掃除などの日常的な行動、あるいは社会的、対人的スキルや問題の解決策にいたるまで多くの物事を学習しています。ここでいう学習とは、何かを経験することによって、その後の行動が半永続的に変化することを意味します。遺伝子によって元々プログラムされている行動もありますが、その後様々な経験を繰り返すことによって、人間は様々なものを身につけます。
学習によらない、遺伝的にプログラムされている行動もあります
生まれてすぐに必須である行動は遺伝的にプログラムされていることがあります。例えば、乳児の
吸引反射がこれに該当します。授乳をうまく行えるように、健康な乳児であれば、唇に触れるものを何でも吸おうとします。これは経験とは関係なく、始めから自発的にできる行動です。また成長するにつれ人間の体にも変化が生じ、例えば今までより声が低くなったりします。もちろんこれも、学習によるものではありません。
学習にはネガティブなものも含まれます
学習は今までできなかったことができるようになるポジティブなイメージの言葉ですが、ネガティブなものが身についてしまうこともまた学習です。社交不安障害、閉所恐怖症や高所恐怖症、放火癖や窃盗癖、まだ無力感も学習と関連していると考えられます。例えば
社交不安障害は、社交場面・対人場面での経験、緊張したり苦手意識を持ったりすることが原因となって生じます。様々な精神的症状も学習の産物として理解することができます。
学習に関連した障害が近年注目されています
1990年代になってから、
学習障害(LD:Learning Disorder)や
注意欠陥・多動性障害(ADHD:Attention-Defect-Hiperactivity Disorders)が広く認識されるようになってきました。学習障害は、聴覚や視覚に障害がなく、知的発達にも遅れがないにもかかわらず、学習面で何らかの困難がある状態を指します。1つの障害ではなく、様々な状態を含む総合的な状態を指すもので、医学・心理学・教育学といった様々な分野で研究が行われています。
注意欠陥・多動性障害も学習に関する障害と考えられます
注意欠陥・多動性障害は日常的な行動に必要な注意力を欠き、落ち着いていてじっとしていられないなど、広範囲な生活全般に関する行動障害です。授業に集中できないことから、学習障害と同じく学校の授業についていくことが困難です。注意を集中することや、行動を自己抑制することを学習する心理療法が中心ですが、近年治療薬の開発が行われ、日本でもADHDの適応薬が認可されています。