神経細胞間の情報伝達は神経伝達物質によって行われています
神経伝達物質は、神経細胞間の領域であるシナプスにおいて情報伝達を介在する物質です。神経伝達物質はシナプス前細胞で合成され、
シナプス小胞に貯蔵されます。シナプス前細胞に
活動電位が到達すると放出され、拡散して後シナプス細胞にある受容体と結合し、再び活動電位が発生します。1つの細胞内の情報伝達は活動電位によって行われますが、細胞間の情報伝達は神経伝達物質によって行われます。
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神経伝達物質はそれぞれ対応する受容体に結合することで作用します
後シナプス細胞には
受容体タンパクがあり、神経伝達物質が結合することで、細胞外のシグナルを細胞内シグナルに変換します。受容体はそれぞれ特異的な物質(神経伝達物質、ホルモン、細胞増殖因子などのリガンド)としか結合しません。以下に挙げる神経伝達物質に対応する、アセチルコリン受容体、アドレナリン受容体、GABA受容体、ドーパミン受容体、セロトニン受容体などが存在します。
神経伝達物質は大きく3種類に分けられます
心理学の世界ではノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質が頻繁にでてきますが、これらは神経伝達物質のうちのほんの一部に過ぎません。神経伝達物質は大きくアミノ酸、ペプチド類、モノアミン類の3種類に分けられます。ノルアドレナリンやドーパミンはこのうちの
モノアミン類に含まれます。またその他に、一酸化窒素や一酸化炭素などの気体分子も神経伝達物質と同様の作用を示すことが知られています。
グルタミン酸やグリシンなどのアミノ酸は神経伝達物質として働きます
アスパラギン酸・グルタミン酸・γ-アミノ酪酸(GABA)・グリシンなどの
アミノ酸が神経伝達物質として知られています。グルタミン酸は興奮性神経伝達物質で、記憶・学習などの脳高次機能に重要であることが知られています。GABAと略されるγ-アミノ酪酸は脳高次機能に重要な抑制性の神経伝達物質です。また、グリシンは中枢神経系においてGABAに次いで重要な抑制性神経伝達物質です。
(γ-アミノ酪酸(GABA):wikipedia パブリックドメイン)
バソプレシンやソマトスタチンなどのペプチド類も神経伝達物質です
ペプチドとはペプチド結合によって様々なアミノ酸が結合した分子群です。例えば、バソプレシンは9つのアミノ酸からなるペプチドで、抗利尿ホルモンとして知られていて、利尿を妨げたり、血管を収縮させて血圧を上昇させる効果がありますが、一方で下垂体前葉など脳内において神経伝達物質として広く作用します。このように、神経伝達物質でありながら、同時にホルモンとしても働く物質は多くあります。
モノアミン類やアセチルコリンも非常に重要な神経伝達物質です
モノアミンは、アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した化合物であるアミンのうちで、アミノ基を一個だけ含むものを指します。ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンはいずれも非常に重要なモノアミン神経伝達物質です。また、
アセチルコリンはモノアミンではなくコリンの酢酸エステル化合物であり、副交感神経において神経刺激を伝える神経伝達物質です。
(ドーパミン:wikipedia パブリックドメイン)