アスペルガー症候群は知能低下の認められない広義の自閉症の1タイプです
アスペルガー症候群は広汎性発達障害の1つであり、DSM5では広義の自閉症とも言える自閉症スペクトラムに基づいて再定義されています。アスペルガー症候群の場合は、認知の発達の遅れや、言語発達の遅れを伴わず、むしろ特定分野の知的能力が高い例が知られています。一方で相手の表情が読み取れなかったり、人との距離のとり方や話しかけ方が不自然だったりするなど、コミュニケーションに問題があり、興味にも偏りが見られます。
アスペルガー症候群の定義の仕方は1つではありません
アスペルガー症候群の定義の仕方の1つが、①認知・言語発達に遅れがないこと ②コミュニケーション障害がないこと ③社会性の障害とこだわりがあること、の3つです。一方、上記のようにアスペルガー症候群は自閉症の1タイプであり、コミュニケーション障害もあるとする考え方もあります。病気には様々な基準が存在し定義の仕方によって診断が変わってしまいますが、患者さんは一人の人間であり、病名が何かは最終的には問題ではありません。一人ひとりに合わせた療育、支援がなされることが重要です。
高機能自閉症とアスペルガー症候群は同じ意味で使われる場合があります
高機能自閉症は知的発達が正常な自閉症のことを指し、アスペルガー症候群とほぼ同一の意味で使われる場合があります。これも研究者によって意見が異なり、少なくとも臨床的には区別する必要がないと考えられる場合が多いようです。そもそも自閉症とアスペルガー症候群はひとつながりのものであり、厳密に区別できるものではありません。区別せず包括的に捉える自閉症スペクトラムという考え方が近年は主流になってきているようです(別ページで紹介します)。
アスペルガー症候群は1980年代以降注目されるようになりました
アスペルガー症候群の名前は、オーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーに由来します。彼が発表した「小児期の自閉的精神病質」という論文は、当初自閉症の陰に隠れてあまり注目されませんでした。しかし、(当時)自閉症ではないと診断された子ども達の中にも社会性や想像力に障害がある子どもがいることがわかってきて、その報告例と先の論文の内容が近いため、徐々に注目されるようになりました。以降ICD-10やDSM-IVにも採用され、幅広く知られるようになりました。
アスペルガー症候群を障害とするかについては議論がなされています
コミュニケーション障害がないという定義に則れば、社会性の障害とこだわりがあることがアスペルガー症候群の特徴となってきます。社会性の障害に関しても、あくまで社会性が特徴的で少数派に属するだけで障害ではないという議論がなされています。一方で、アスペルガー症候群の方々が社会に適応しにくい困難さを抱えているのは事実です。引きこもりになったり、二次障害の形でうつ病を発症するケースもあります。適切な支援と福祉制度の充実が必要とされています。